俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
「……どうしたよ、綾乃」彼が、どこか痛むかのように顔を歪める。「嬉しいってより、悲しいって感じ?」

 わたしは、彼にそんな顔をさせたくなかった。

 滂沱と流れる涙をそのままに、わたしは笑みを作って首を振る。「違うの……。ご、めんね。あのね、すごく嬉しいの。でも、今日、振られ、……ちゃって。だから、気持ちを整理するじ、かんを、……」

 胸が詰まる。

 苦しい。

 助けて。助けて。

 たまらず、胸を押さえ、泣きじゃくりをあげる。いったいどうしたっていうのだろう。涙腺がばかになったみたいに――


「おれがいるのに、そんなふうに泣かせてたまるかよ」


 顔をあげたときには、すばやくこちらに移動してきた彼の腕に包まれていた。

 あたたかい。触れる、からだの前方。背中に回される大きな手のひら。ついで頭のうしろを優しく撫でる手つき。

 首の後ろを支えられると、わたしは上を向くかたちとなり――

 目が、合った。

 わたしは彼の瞳の奥にあるものを見た。

 切なさ。悲しみ。苦しさ。愛おしさ。

 柔らかく優しい動きから一変。

 強く、抱きしめられていた。
< 15 / 259 >

この作品をシェア

pagetop