俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
 続いて、彼女の顔がダイニングテーブルのほうへと向けられる。「えっと、……あれも。帰って早々にわたしが片付けるべきなわけ?」

 飲みかけのジュースやパンの袋の残骸を言っているらしい。とはいえ。前日までのごみはちゃんとごみ箱に入れておいたし、そんなに怒られる意味が分からない。

 なんなのだろう。実家に帰って、甘やかされすぎたんじゃないのか?

 頭が沸々と沸騰しそうになるが、それを抑え、ひとまず客間に敷いたままの敷布団を取りに戻った。綾乃は、テーブルのごみを分別せずにごみ箱に突っ込み。洗面所で手を洗っていた。

 自分の布団が汚物扱いされるなどとは、心外だった。

 ともあれ、丈一郎は妻の希望を叶えることを優先した。

「じゃあ、敷布団のうえに、シーツ代わりにブランケットかけるから、それでいい?」

「いいよ、それで……」

 言うことを聞いてやったというのに、礼を言うどころか、不服も露わな綾乃。――まあ。本当はもっと実家にいられるところを自分の誕生日に合わせてわざわざ帰ってきてくれたんだから、我慢しよう。

 そのように割り切れる自分と、なんなんだろうと怒りを感じる自分。
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