俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
 実を言うと、後者のほうが圧倒的に優勢だった。


 * * *


 おぎゃああああ!


 いったいどうしたんだろうと問いただしたくなるような悲鳴が聞こえ、丈一郎は慌てて風呂場から寝室へと駆けつけた。「どうした?」

 見れば、妻は我が子の背に手を添え布団に寝かせようとしていた様相。

「あーあ。やっぱ、起きちゃった……」

 ぎゃああああ! と悲痛な悲鳴に混ざり、なんとか妻の声が聞き取れた。諦めたように、抱っこ紐を肩から下ろし、「仕方ないなあ。授乳するかなあ」と呟いている。

 ぱちん。と腰の後ろのストッパーを外し、床に、抱っこ紐を放り投げる感じで置いた。その、乱雑な手つきが、丈一郎の気に触った。

「――物。放り投げるやつがあるかよ」

「は?」

 布団にあぐらをかいて座り、娘を抱き起こす綾乃の顔が険しかった。とはいえ、言うべきことはちゃんと言うべきだ。

 優香の泣き声に妨害されつつ、丈一郎は声を張った。「それさ。安いものじゃないんだろ。物を、放り投げるやつがあるかよって、おれは、言っているんだ」
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