俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
 母親業を、ちゃんとしてもらわなくては、困る。

 カビるのを防ぐため、最後に水を流して完了。バスタブには、あと五分ほどでお湯が溜まるはず。風呂入ってさっぱりすれば、綾乃の機嫌もすこしはマシになるだろう。

 そう思い、寝室に足を運ぶと――

「……あり?」

 布団のうえで。

 何故か、自分のお腹のうえに、優香を腹ばいにさせて寝かせ、綾乃自身も眠っていた。

 11月だというのに、掛け布団もかけず。――寒くないのか?

 変な寝方をするものだと、丈一郎は思った。重くないのか? ううむ……。

 数秒悩んだ末。このままだと、綾乃の腰に負担がかかるのではないかと思い、丈一郎は、優香のからだに手をかけた。

 柔らかい。

 というのが、丈一郎の印象だった。赤ちゃんのからだに触れるのはこれが初めてだ。丈一郎は、抱っこはおろか、ろくに触れたことすらない。空港で頭を撫でたあのときだけ。

 骨があるのかと思うくらい、からだじゅうがぶにぶにで。戸惑いつつも、丈一郎は、赤ちゃんの脇腹に、両の手をぐっとかけて、……布団に置けばどうにかなるだろう。そう思い、優香を起こさぬよう、留意して置いた――
< 172 / 259 >

この作品をシェア

pagetop