俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~

◇1

 ぎゃあ。ふぎゃああ。ぎゃああ……。


 耳障りな声が聞こえのそのそと身を起こす。子どもが生まれて以来――否。妊娠後期に突入して以来、連続で三時間以上眠れた試しがない。半年間の疲弊が、ボディブローとなって、綾乃の心身を蝕んでいた。――疲れた。

 たまにはゆっくり、寝たい……。

 けども。

 いまは。マンションにひとり。手伝ってくれるひとなど誰一人としていない。自分だけだ。丈一郎は会社。だから身を起こし、なんなのよと喚き散らしたい自分を覆い隠し、笑顔を作って応対する。「どちたの。優ちゃん。おっぱい?」

 ふぎゃあ。ふぎゃあ。と顔を真っ赤にし泣きわめく我が子。時計を見る。母乳はさっき寝る前にあげたばかりだ。三十分前。おむつは。濡れていない……。

 このパターンの繰り返しで、綾乃はいつも絶望的な気分になる。――何故。こんなにも泣くのか……。

 よっこいしょ。とラッコ抱きの姿勢から立ちあがり、我が子を抱っこしひとまずベランダに向かう。……ベランダに向かうたび、先日丈一郎にかけられた台詞が胸を刺す。

 ――なにやってんだよ!
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