俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
 なにも見えなくする世界へと。

 舌と、舌を絡ませることがこんなにも気持ちいいって、知らなかった。

「ふ――あ」鼻から息が抜け。寸時、許される呼吸。自分の息があがっているのが分かった。こんなものを受けてしまってこのさき大丈夫なのかわたし。

 頭のなかは台風でも去ったかのような。

 座っていてよかった。腰などとっくに抜けている。

「まだだよ綾乃。まだ綾乃のこと、見せて」

 ちゅ、と音を立ててまぶたにくちづける彼は、それから十秒足らずで再びわたしの唇を貪る。

 唇が性感帯だなんて、いまのいままで知らなかった。

 下唇をちゅうちゅうと吸われ、思わず笑ってしまいそうになるのだが、柔らかく噛まれた瞬間、笑いは彼方へと消失し、快楽のまっただ中へと追いやられる。

 行動主体である彼は、わたしを揺さぶるのみ。

 負けじとわたしは彼の姿を追うのだが、柔らかく舌を噛まれ、陥落。

 もう、彼には勝てない。

 彼の想いには、勝てない。足掛け八年間、彼はわたしを思い続けてきたのだ。……わたしが元彼氏である一条先輩を思い続けてきた年数と同じだけの年月を。
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