俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
 綾乃だって同じだ。実際仕事に就いてみて、予想と違うと思って辞める人間も珍しくない職種だった。確かに、大変だ。期限はあるし英語は正確性が求められる。仕事を迅速にこなす頭の回転の速い人間でなければ務まらない仕事だ。一人前に育つまでに綾乃は一年の期間を要した。なかには、半年で育った強者もいるらしい。――だから。

 自分たちがどれだけの努力をしてきてこの生活をキープしているのか。いままでの人生で、これからの生活で。そこを探ろうともせず、上澄みの、『なんやら都会でよう稼いどる連中』――都合のいいその事実だけを抽出する田舎者のその深層心理を、綾乃は、嫌悪した。――同じ匂いは、故郷緑川の友達からも放たれていた。持ち物がいいおもちゃがいい綾乃が身ぎれいにしている――彼女たちはときには言葉で。ときには目線のみで。それを態度で示した。
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