俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
 母に相談したところ。どうやら都会に住んだことのない母にはその感覚が分からないらしく。「そんなもんやわいねえ」笑ってあしらわれた。格差社会において、ある程度面の皮が厚くなくては、強者の側など務まらないらしい。綾乃の母は、そうした目線に決して鈍感ではないが。笑って受け流せるタイプの人間のようであった。

 ――杉野(すぎの)さんやって。悪気があるわけやないんやし。優香ちゃん世話してくれんの、ありがたく思わな駄目やよ。

 最終的には自分の雇ったベビーシッターのフォローに回る。……母と話しても無駄だと感じた。

 天才は、生まれながらにして天才などではない。――確かに。天賦の才というものを持った人間は世の中に存在する。だが。

 世間一般の人間が思うほど、その地位を維持し続けることは、簡単ではない。努力も才能のうち。よく言われるとおりだ。そのからくりと同じで。

 高給取りがその職に就きその座をキープし続けるのも、大変な労苦を伴う。だからこそ、たまに金を遣うことで憂さ晴らしもするし。
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