俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~

 だからこそ、自分や家族にいいものを買ったり。美味しいものを食べたりする。――それも、ストレス発散の一種だ。それまで奪われてしまっては、とても、やっていけない、と綾乃は思うのだった。

 決して、散財しているわけではない。だが。

 愛するひととの初めての子どもが生まれ。お金を遣うことに対し――都度揚げ足取りをする人間の心理を、理解できなくもないが。理解したくないと彼女は感じた。

 努力の成果だ。自分の金だもの、好きに遣ってなにが悪い――そう言ってやりたいのはやまやまであったが、前述の事情ゆえ、彼女は我慢した。だが。

 ベランダからまだ明るい空を見上げる。田舎よりもそのいろはくすんでいた。向こうに居た頃は、母や兄一家が仕事があるなかでもちょくちょく様子を見に来てくれた。いまは誰もいない。気軽に話せる友人も知人も。一日がこんなにも長いなんて――

 子育てをしてみるまでは、思ってもみなかった。
< 196 / 259 >

この作品をシェア

pagetop