俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
 足を引きずるようにし、部屋に入り、布団へと向かう……。いつも、娘をお腹のうえに乗せたまま眠るので、寝返りも打てない。自由に行動できない。部屋は、……散らかしっぱなし。洗濯は、丈一郎の分は週末に彼にまとめてやってもらっているし、綾乃と娘のぶんは多めの衣類を通販で追加購入して三日に一度程度で凌いでいる。

 料理も手抜き。食べるのは、一週間に一度米を炊いて小分けにして冷凍したものと、二三日に一度大量に作る味噌汁。丈一郎は綾乃がスーパーでお惣菜を買ってきても、その味が合わないらしく、早々に「おれしばらく弁当買って帰るわ」と言われてしまった。

 子どもを育てるために育休を取得しているのに、家のことがままならないこの状況……。

 優香を起こさぬよう、ゆっくり、敷布団に背中を倒し、綾乃は涙した。――なにに対して泣いているのか。自分でもよく分からなかった。ただ。

 誰かに対してめちゃくちゃ謝りたい。――会社の人間。丈一郎。優香。実家で優香の世話をしてくれたすべてのひと……。

「――こんな。人間で、ごめんなさい……」
< 209 / 259 >

この作品をシェア

pagetop