俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
 ひぐっ、と泣きじゃくりをあげ、見慣れた天井を見上げた。いつも同じいろをしている。いつもいつも日中でも暗い色をしている。綾乃の人生同様。

 綾乃が泣けば優香のからだも揺れる。なのに。

 綾乃の慟哭は留まることを知らなかった。――苦しい。助けて欲しい。誰に? 近所に誰もいないのに。けいちゃんはいたとしてもなにもしてくんない。わたしひとりで世話をするのが普通だと思ってるみたい。

 丈一郎が懸命に働き、小池家の生活を支えている。それは事実だ。――が。

「わたしが欲しいのは、あんな言葉じゃ、ないの……」

 綾乃は、悲しみを言語に変換させる。丈一郎のあの目線。態度。すべてが――彼の理想とする母親像と乖離していることを物語っている。――かつてけいちゃんとは、分かり合えた仲。だがいまは――。

 こんなにも、遠い。

 近くにいても、遠いひと。そのことが――

 より、綾乃を、深みのある絶望へと追いやった。

 救いを求め、我が子の顔を見た。

(このまま起きなければいいのに……!)

 それは、瞬間的に走った導火線のような、怒りの感情であった。――この子がいなければ。
< 210 / 259 >

この作品をシェア

pagetop