俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~

◇2

 赤子の泣き声に揺さぶられ、ゆっくりとまとまらぬ意識を浮上させる。慣れているゆえ無意識のうちにお腹のうえの我が子の背中に手を添え。からだを起こして抱っこの体勢に入る――

 はずが。

 ふ。とお腹のうえの我が子が逃げていく。――あれ。綾乃は疑問を声に出した。見れば。

「いつ――帰ってきたの」

 生まれて初めて、我が子を抱っこする夫の姿があった。「ついさっき」と丈一郎。

「飲み会から帰ってきたら優香が泣いてるのが玄関で聞こえてさあ。手ぇ洗って慌てて走ってきたんだよ。……綾乃おまえさあ」

 不慣れな手つきで我が子を抱っこし直すと気遣わしげに丈一郎は綾乃を見つめ、

「……向こうでちょっと、寝てきたら? 優香のことはおれに任せて」

 ――は。

 なにを言っているのだろう。いったいこのひとは誰なのだろう。こんなふうに――目を合わせて話すのなんていつぶりだろう。様々な疑問が渦となって綾乃の頭をよぎるが。ひとまず。

 手早く優香のおむつだけを取り替えると、綾乃は、夫の勧めに応じた。
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