俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
 快楽への階段を数段のぼりかけたところで置き去りにされてしまい、ほてったからだを持て余す。

 上体を起こし、ふう、とため息をつく。

 あのままことを進められていても、文句など絶対に言わなかった。むしろ、望むところだった。

 望むところ?

 自分のなかから生まれる感情に愕然とする。もう、なにがなんだかわけが分からない。

 つい、昨日までわたしには彼氏がいた。けいちゃんは大切な友達のひとりだったはず。

 といっても。

『彼』が本当に愛していたのはわたしではなかったということに、薄々勘づいていた。

 考えることは後回しにして、とりあえず、いま自分にできる最低限のことをしておこうと思った。けいちゃんのパジャマを彼に渡さなくてはならない。すこしためらったのちに、わたしは浴室のドアをノックした。

「はーい」返事は早かった。

 わたしは意識的に声を張った。どうやらもうシャワーを浴び始めている。「あのね、けいちゃん。着替え、ドアのところに置いておくから」

「おお、サンキュ」

 わたしはなるべく彼のほうを見ないようにし、そのままそこから去った。
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