俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
 人間は、強い決意を口にするときにちからがこもる。発声した丈一郎は、我が子をお腹に乗せたまま、眠る間も母親業に勤しむ最愛の妻へと手を伸ばす。――伝わるようにと。

 これからの彼女が、これ以上苦しむことのないようにと――願いを込めて。

「けいちゃん……」彼女は涙声だ。だが。いまの彼女は延々と話し続けられる状況下にない。そこで丈一郎は、先ず、現状を変えるための提案をした。

「粉ミルクに変えるってのも手じゃね? 授乳間隔を伸ばすために。あれやると三時間おきになるんだろ」

 ああ、と綾乃は口を開けた。「あげたこともあるんだけど……。優ちゃん、哺乳瓶の口のゴム臭さがいやみたいで。すぐ顔背けるの。

 夜の授乳頻度を少なくするために、何度かミルクをあげてはみたんだけど、……ちょっと飲んで顔をしかめてほとんど残す。その繰り返しだと、いちいち夜中に台所立つのもばからしいし、だったら授乳するほうが全然楽って結論に陥って、……以来。試さずにいる」

「最後に粉ミルク試したのいつ?」
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