俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
 常に切羽詰った様子で。怒ったり虚ろな顔でぼうっとしていたりと。頭の働きも鈍くなっている感じだ。休日はご飯のことで丈一郎が急かすことも多い。……友達恋人時代はあんなに表情豊かだったのに。主に、二通りの顔しか見ていない。

 勿論。授乳しているときに見つめる眼差しは優しい。また笑みを見せる赤子を見て微笑むことはあれど。なにか……疲れ切っているのが伝わる。

 丈一郎がそのことを打ち明けると「やっぱりな」と男は肩をすくめる。

「嫁さん。相当、……追い込まれているんだな。

 産後一ヶ月は確かに大変だ。鬱になる女性も珍しかない。だが三ヶ月が経過しているのにその状態だと……ちょっと心配だな。おまえ。

 嫁さんに。『母親』と『妻』の仕事から開放する時間を作ってやれ。でないと。

 育児に孤軍奮闘する嫁さんが、気の毒だ」

「孤軍奮闘って」丈一郎は男の言葉に引っかかりを覚える。「――おれ。外でちゃんと仕事もしてんすよ。それなりに節約もしてます。ローン以外に借金もないし、浮気なんか興味ゼロです。――なのに。

 父親は、それ以上のことを要求されるんですか」
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