俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
 おれだって疲れてるのに。と丈一郎が言い足すと、「違う」と男は首を振る。――いちいち言動の引っかかる男だ。「なにがですか」と丈一郎は気色ばむ。

「先ずな。

 出産は。全治一ヶ月の大怪我だと思え。それから。

 妊娠して十ヶ月間で作り上げたからだが、出産してすぐにそう元に戻ると思うか? ……うちのカミさん。

 おれよりも若いんだが。産後一年のあいだは、風邪なんか引くと二週間くらいげほげほ言ってたな。あれは本当に辛そうだった。個人差はあれど。産後の女性のからだが完全に元に戻るまでは一年かかると思っといたほうがいい。そーゆー認識でいろ。おれの知人で、出産を振り返って、ダンプカーに引かれたほうがマシ、って言い切ったやつがいたぞ。そんくらい壮絶なんだ。……おまえのことだから。

 出産お疲れ様。

 ……とか言ってやれてないんだろ? どーせ」

 どーせとか言われると言い返したくなる。……のだが。

 事実。

 無念。

 よりによって、彼女の誕生日のその日に彼女を最も傷つける言動を取った。取り返しのつかない過ちだ。
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