俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
 すべて、蒔田(まきた)一臣(かずおみ)のおかげであった。――綾乃にプロポーズしたあの日。絶対に幸せにしてやると胸に誓った。あの情熱を体内に蘇らせる。蒔田の下りた駅が懐かしかった。マンションが高額ゆえあの地での購入を諦め、それでもお高めの急行の停まる駅近辺に丈一郎たちは居を構えた。ローンの返済は楽ではない。だが。綾乃とならやっていける――丈一郎は強く信じていた。

 帰りの電車は、金曜日ということもあり、学生やサラリーマンの姿が目立つ。聞きたくなくても周りの会話は耳に入ってしまうというもの。丈一郎はあるときはJK同士のお悩みを聞き流し。あるときは深刻そうに仕事の話をするリーマンの事情に耳を傾け。

 情熱を燃やし続けながらときを過ごす。

 結論は、決まっていた。


 ――綾乃の、笑顔を、取り戻す。


 ここのところ晴れやかな彼女の笑顔を見ていない。ならば。おれのするべきことは。

 暗い車窓を見上げる丈一郎の胸のうちは、すべて、綾乃のことで満たされていた。これからもっと――満たされたい。綾乃のことを、満たしてやりたい。
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