俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~

◆1

 もうすぐ、けいちゃんの誕生日だよね。なにが欲しい?


 居酒屋にて彼氏のぶんの焼き鳥を箸で櫛から外しながら最愛の彼女がそんなふうに訊くものだから。

 間髪入れずに丈一郎は答えた。

 * * *

 それを聞いたときの彼女の表情といったら――傑作だった。

 綾乃以上に可愛い生き物を丈一郎は知らない。

 泣いたり、笑ったり、ときには怒ったりとなんと、忙しいのだろう。

 むくれる顔ひとつとっても丈一郎には愛おしくてたまらない。

 こうして仕事をして帰る道中も、思い返して頬が緩んでしまうくらいだ。

 もうすぐ綾乃に会える。

 酒でも買って帰ろうか。思いついていつもお世話になっているスーパーに寄ってみた。ケーキは、要らないだろう。綾乃が用意しているはずだ。

 彼女はずっと去年の誕生日のことを気に病んでいた。

 丈一郎は、あの日綾乃に会う前に、彼女が一条(いちじょう)誠治(せいじ)と別れたことを知っていた。

 * * *
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