俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
二十日間連続で仕事をしていた状況を不憫に思った上司が、その日は午前で返してくれた。有休も振休も溜まりまくっていたから丈一郎が拒む理由はなかった。
会社を出た途端、携帯に電話があった。大学の先輩からだった。
『小池くん、誠治くんが婚約したのを、知ってる?』
『は?』目の前が暗くなった。一条誠治は、同じ大学の、学年がひとつうえの先輩であり、丈一郎の最愛の女性の彼氏であるから、知ってはいる。まさか彼が――
綾乃と婚約をしただと?
気配で丈一郎の動揺を察してか、電話の相手は『違うわよ』と笑った。
『お相手は、三沢財閥の令嬢よ。なんでも、生まれたときから結婚する相手が決まっていたらしいわよ。これね。まだ、内々の情報だからね。分かっていると思うけど、あなたの胸のうちだけに留めておいて』
『とすると、綾乃は……』
『決まっているでしょう』