俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
 そのあと、なにを話したのかはあまり印象にない。情報を提供してくれたことへの礼は伝えたと思う。彼女は、一条家と仲の良いお嬢様で、丈一郎の不憫な片想いのことも、一条と綾乃が恋人関係にあることも知っている。知っていたうえで、丈一郎のためにいちはやく教えてくれたのだ。

 とりあえず会社のある駅から自分の住むマンションの最寄り駅へと移動し、駅近くのコーヒーショップに入ったと思う。不思議と、移動した記憶も電車に乗った記憶も残っていない。だが人間、頭が真っ白でも行動はできるものだ。

 丈一郎の頭のなかには、疑問と疑念が渦巻いていた。思考能力が著しく低下していた。コーヒーの味が感じられなかった。

 ただひとつ思うのは綾乃が傷ついていることへの確信、だった。

 今日は、あいつの誕生日だ。あいつのために、なにか、……してやりたい。

 といっても今日は平日だから。あいつが仕事を終わった頃を見計らって電話でもしてみるか。

 プレゼント。
< 49 / 259 >

この作品をシェア

pagetop