俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
 窓ガラス越しでも分かる。彼女の表情は深刻そのもので――

 瞬間的に、丈一郎は悟った。

 ああ――別れたんだな、と。

 思い立ったときには、足が動いた。


 まっすぐに、彼女のほうへと向かっていた。


 
 綾乃は、丈一郎と結ばれたあと、出しっぱなしになっていたケーキを見て『ごめんね』と謝った。お祝いをしてもらったのに、泣いたことも気にしているようだった。丈一郎からすれば、そんなことは大したことではないのだが。

 大切なのは、自分と彼女の気持ちだ。

 過去や、結果に行き着くまでのプロセスなど、構わないと断言できるくらいに。

 丈一郎のこころは、綾乃と想いが通じあったことで満たされており、途中、苦しんだ彼女がどんな行動を取ったとて、気にしやしなかった。ケーキは、冷蔵庫に入れてまた食べてもいいし、なんならおれが食べてもいい。泣いたことは別に、仕方がない。彼氏に振られた直後なのだから、我慢をするほうが無茶というものだろう。

 しかし。バースデーソングを歌われ、ケーキを用意してもらったというのに、それを喜びで返せなかったことが、綾乃は悲しいのだ。
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