俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
 洗面所で手を洗うと、綾乃は彼に近づいた。彼の瞳が、綾乃の姿を認めると収縮する。いつも、綾乃を見ると彼の表情が柔らかい笑みへと変わるのが、綾乃には嬉しかった。「おかえり、綾乃。楽しかった?」

「うん、ありがと」綾乃は、彼を胸に抱き締める。

 すると、素早く彼の手が綾乃の背中に伸び。衣服の下に手を滑りこませ、ぱちん、と拘束を外す。もう慣れたものだ。

 焦らすようなことはしない。彼が脱がせる動きに従い、綾乃は彼のしやすいように動く。あっという間に――

 丈一郎の情熱を、受け止める。

「み。見なくていいの、サッカー……」テレビの歓声が耳に入る。どうやら選手が得点を決めたみたいだ。すると、顔を起こした丈一郎は手を伸ばし、リモコンでテレビを消す。

「いい。あとで携帯でチェックするから、いい」

 綾乃の頬に口づけると、丈一郎が言ってのけた。


 いまは、おまえの声だけが聞きたい。


 * * *


 綾乃の知る男性は、丈一郎を除けばひとりだけだ。

 なので、一般的な行為がどういうものかを、彼女は知らない。
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