俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
 綾乃は丈一郎を起こさぬようそっと身を起こし、丈一郎の頬に手を滑らせた。肉の薄い男性特有の頬。肌の手入れをきちんとする丈一郎の肌は、触り心地がいい。職業柄、ひとと会うことの多い丈一郎は、身なりに気を遣っている。綾乃の愛用している乳液先行型の乳液を塗ってみたところ、『気持ちいー!』と丈一郎は喜んでくれた。

 閉じた目も、鼻も、口も大きい。肌が、白い。陶器のような白さだ。年をとってからシミになるのを気にして、例年四月から日焼け止めを塗っているそうだ。日焼け止め落としも常備している。

 下唇に指の腹を滑らせる。意外と、かさついていた。長いまつげがすこし震えた。起きてしまうのではないかと内心、綾乃は身構えたが、もとの落ち着きを取り戻し、安心した。

「けいちゃん」

 胸の奥から、『愛おしい』という情愛が湧いてくる。自分は、確かに丈一郎を愛している。

 なんて、美しい顔でこのひとは眠るのだろう。

 なんて、美しい顔でこのひとはひとを愛するのだろう。

 綾乃は、浅く上下する丈一郎のはだかの胸に頬を預けた。彼になら、安心してすべてを委ねられることを、綾乃はよくよく知っている。
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