第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
「そこは、どうにかするつもりです」

私がそう言うと、
ルーク団長は腕を組み、ふっと口元を緩めた。

「でも、いいんじゃない?
 お互い、良い刺激にはなると思うよ」

「ですよね!」

私は思わず身を乗り出す。

「とりあえず考えているのは、
 お互いの騎士団から3人ずつ出して、
 その勝敗で判断する、という形です」

「ふむ」

ルーク団長は顎に手を当て、少しだけ考え込む。

だが次の瞬間、軽い口調のまま視線だけが鋭くなった。

「たださ。
 第3騎士団の要求は“勝てば即・統合”なんだろ?」

「……はい」

「問題は第2騎士団だよね」

ルーク団長は肩をすくめる。

「向こうの要求をどこまで飲むか。
 それと同等の“見返り”を用意できないと、
 ただの力比べで終わっちゃう」

「同等のもの……」

私が呟くと、

「そう」

ルーク団長はにやりと笑った。

「彼らが欲しいのは、名誉か、発言権か――
 それとも、もっと別のものか」

その言葉に、部屋の空気が少しだけ張りつめた。

「確かに、そこは大事ですよね……」

セナは腕を組み、真剣な顔で考え込む。

「剣のメンテナンス費用の負担、
 筋肉増強トレーニング用の機材の増設……
 あとは、食堂で美味しいものが食べられるとか……」

「それ、完全にセナが欲しいものだよね」

「……」

セナは小さく視線を逸らした。

私は一歩前に出て、ルーク団長の耳元へそっと顔を寄せる。

「じゃあ――これ、どうです」

こそっと囁く。

ルーク団長は一瞬きょとんとしたあと――

次の瞬間、吹き出した。

「……ははっ!」

そして、口元を押さえながら言う。

「いや、それはわりとあり!」

その表情は、完全に“乗り気”だった。
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