第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
第2騎士団 対 第3騎士団
申請して、3日。
「やあ」
低く落ち着いた声が、背後からそっと触れるように届いた。
「……ディラン」
振り返ると、彼はいつもの端正な微笑を浮かべて立っていた。
けれど、その瞳の奥には、どこか期待を含んだ光が揺れている。
「今日は、少し時間があるんだ。
よければ、お茶でもどうかな」
一瞬、胸の奥がきゅっと縮む。
言葉が喉に引っかかって、うまく出てこない。
「……」
「君は、これが欲しいはずだ」
ディランは、わざとらしくない絶妙な仕草で書類をちらりと見せた。
――魔宝剣使用による模擬決闘の許可証。
光を受けて、淡く輝く紙片。
それが、今の私にとってどれほど重要か、彼はよく知っている。
「それは……」
「俺とお茶をするだけでいい」
口元をほんの少しだけ緩め、いたずらっぽく言う。
その余裕が、腹立たしいほど絵になる。
「どうだい?」
「……喜んで」
そう答えた瞬間、ディランは満足げに目を細めた。
2人でガーデンへと歩き出す。
花々の香りをふわりと運んでくる。
けれど、隣を歩く彼の存在感のほうが、よほど強くて落ち着かない。
「あれ! 殿下ー!! いらっしゃい!」
明るい声が弾け、コーラルオレンジの髪が陽光を跳ね返すように揺れた。
駆け寄ってきたのは、黄緑色の瞳を輝かせたレオだ。
「やあ、レオ」
「デザート、どうぞ!」
レオは手際よく皿を並べていく。
ふわりと甘い香りが広がり、張り詰めていた空気が少しだけ和らいだ。
彼は私の専属料理人。
太陽のように明るく、元騎士団員という異色の経歴を持つ青年だ。
「相変わらず、美味しそうだね」
「ありがとうございます!」
「それより、殿下。よくいらっしゃいますよね?」
「来ては、だめかな?」
「いえ! 意外と王子様って、自由なんですね〜」
無邪気に笑うレオに、私は思わず苦笑する。
その横で、ディランは当然のように椅子を引き、私を座らせた。
「可愛い婚約者の顔が見たくてね。
本当は、毎日でも来たいくらいだ」
「やめてください」
即座に返すと、ディランは肩をすくめて笑った。
その仕草がまた自然で、慣れている感じが腹立たしい。
「レイさんとオーウェン団長が、気の毒です」
「ふふ。
2人とも優秀だから、少しくらい問題ないさ」
さらりと言い切るその余裕。
王子としての自信と、彼自身の強さが滲み出ている。
……その余裕に、私はまた小さくため息をつきたくなった。
「やあ」
低く落ち着いた声が、背後からそっと触れるように届いた。
「……ディラン」
振り返ると、彼はいつもの端正な微笑を浮かべて立っていた。
けれど、その瞳の奥には、どこか期待を含んだ光が揺れている。
「今日は、少し時間があるんだ。
よければ、お茶でもどうかな」
一瞬、胸の奥がきゅっと縮む。
言葉が喉に引っかかって、うまく出てこない。
「……」
「君は、これが欲しいはずだ」
ディランは、わざとらしくない絶妙な仕草で書類をちらりと見せた。
――魔宝剣使用による模擬決闘の許可証。
光を受けて、淡く輝く紙片。
それが、今の私にとってどれほど重要か、彼はよく知っている。
「それは……」
「俺とお茶をするだけでいい」
口元をほんの少しだけ緩め、いたずらっぽく言う。
その余裕が、腹立たしいほど絵になる。
「どうだい?」
「……喜んで」
そう答えた瞬間、ディランは満足げに目を細めた。
2人でガーデンへと歩き出す。
花々の香りをふわりと運んでくる。
けれど、隣を歩く彼の存在感のほうが、よほど強くて落ち着かない。
「あれ! 殿下ー!! いらっしゃい!」
明るい声が弾け、コーラルオレンジの髪が陽光を跳ね返すように揺れた。
駆け寄ってきたのは、黄緑色の瞳を輝かせたレオだ。
「やあ、レオ」
「デザート、どうぞ!」
レオは手際よく皿を並べていく。
ふわりと甘い香りが広がり、張り詰めていた空気が少しだけ和らいだ。
彼は私の専属料理人。
太陽のように明るく、元騎士団員という異色の経歴を持つ青年だ。
「相変わらず、美味しそうだね」
「ありがとうございます!」
「それより、殿下。よくいらっしゃいますよね?」
「来ては、だめかな?」
「いえ! 意外と王子様って、自由なんですね〜」
無邪気に笑うレオに、私は思わず苦笑する。
その横で、ディランは当然のように椅子を引き、私を座らせた。
「可愛い婚約者の顔が見たくてね。
本当は、毎日でも来たいくらいだ」
「やめてください」
即座に返すと、ディランは肩をすくめて笑った。
その仕草がまた自然で、慣れている感じが腹立たしい。
「レイさんとオーウェン団長が、気の毒です」
「ふふ。
2人とも優秀だから、少しくらい問題ないさ」
さらりと言い切るその余裕。
王子としての自信と、彼自身の強さが滲み出ている。
……その余裕に、私はまた小さくため息をつきたくなった。