第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
部屋を移動し、
カーテンをぴたりと閉め切る。

その向こうで、
アリスが手際よくドレスを着せてくれる。

「はい、できました」

カーテンが開く。

ルイが、じっと私を見つめ――

「うんうん、いい出来ね」

満足そうに何度も頷く。

……が。

「ダメです」

ピシャリ。

ユウリの声が飛ぶ。

「胸元が、開きすぎです!」

「ええ? そうかしら?」

ルイは首をかしげる。

「これくらい、華やかでいいと思うけど」

「なりません」

即却下。

「じゃあ、こっちはどうかしら?」

今度は別のドレスに着替える。

再びカーテンが開き――

「……これもダメです!」

間髪入れずにユウリ。

「背中が開きすぎです!」

「やだ、ユウリちゃん」

ルイがくすっと笑う。

「なんだか、嫉妬深い彼氏というより
娘を溺愛してる父親みたいね」

「お嬢様とは長い付き合いですから。
心配にもなります」

淡々と言い切るユウリ。

「そうだね。ユウリとは、もう10年近く一緒だもんね」

「はい。ですので、妹のような感覚でしょうか」

少し間を置き、真顔のまま続ける。

「変な虫がつかないか、気が気じゃありません。
まあ、もうついてますが」

……その表情で言う台詞じゃない。
それにその虫ってディランのこと?

思わず苦笑いする私に、ルイが大きく頷いた。

「わかるわー。
エマやサラが変な男を連れてきたらって思うと、手が出そうだもの」

――この人、冗談じゃなく本当に出しそうだ。
元公爵家の騎士団員で、しかもかなりの実力者だし。


「ですのでお嬢様を衆目にさらす装いは、
最小限に抑えるべきです」

「……その理屈、パーティー向きじゃないわよ?」

ルイが呆れたように言う。

私は鏡の中の自分と、
言い争う2人を交互に見ながら思った。

――誕生日って、
こんなに試練だったかしら。
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