追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
 鵜ノ崎さんは大学の先輩だ。

 すらりと背が高くて整った顔立ちをしていて、学業も優秀で行動力もあってポジディブで、皆に好かれる人気者で、いつも人の輪の中心にいて……三期上の彼は、私の目にはとにかく眩しい先輩だった。
 田舎から上京したばかりの私には近づくことすらためらわれるほどの、まさに完璧を体現した存在。

 私が酒巻先輩にみっともなく縋りついた食堂での一件を、偶然あの場に居合わせて目撃していた鵜ノ崎さんは――今の私の最良のビジネスパートナーである彼は、私の悪夢には絶対に現れない。

 鵜ノ崎さんは、大学時代の私を一切覚えていないのだ。
 当時の私のことも、私が陥れられたあの〝公開処刑〟のことも。

 それだけが、私の救いだ。
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