追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
そういうのって鵜ノ崎さんらしくなくないですか、と続けかけた矢先、別の声が話に割って入ってくる。
「〝別〟じゃなくて〝特別〟なんですよ~、柊木さんは」
はっと振り返る。
谷俣さんだった。田口さんへ渡すらしき書類を片手に、空いた手で眼鏡を直しながら、谷俣さんはいかにも温厚そうな微笑みを浮かべている。
「柊木さん、なんだかんだでもう三年目でしょう? こんなに長続きしてくれる秘書って今までいなかったし、大事にしたいんだと思いますよ~」
朗らかに笑う谷俣さんと目が合い、私は気まずさを持て余す。
大事にしたい。
その言葉が、胸の奥で妙な引っかかり方をする。
『柊木には絶対辞めてほしくないから』
本人から、それも何度か、面と向かって伝えられている言葉だ。
光栄だ。それだけで満ち足りていたはずだった。なのにどうして私は、それだけでは不足とばかりにモヤモヤしてしまうようになったんだろう。
「そう、でしょうか」
相槌の意味で落とした返事は、いかにも頼りなさそうな声音になる。
辞めてほしくない――その言葉以上の意味があってほしい。いや、あってほしくない。どちらも私の本心だ。
「〝別〟じゃなくて〝特別〟なんですよ~、柊木さんは」
はっと振り返る。
谷俣さんだった。田口さんへ渡すらしき書類を片手に、空いた手で眼鏡を直しながら、谷俣さんはいかにも温厚そうな微笑みを浮かべている。
「柊木さん、なんだかんだでもう三年目でしょう? こんなに長続きしてくれる秘書って今までいなかったし、大事にしたいんだと思いますよ~」
朗らかに笑う谷俣さんと目が合い、私は気まずさを持て余す。
大事にしたい。
その言葉が、胸の奥で妙な引っかかり方をする。
『柊木には絶対辞めてほしくないから』
本人から、それも何度か、面と向かって伝えられている言葉だ。
光栄だ。それだけで満ち足りていたはずだった。なのにどうして私は、それだけでは不足とばかりにモヤモヤしてしまうようになったんだろう。
「そう、でしょうか」
相槌の意味で落とした返事は、いかにも頼りなさそうな声音になる。
辞めてほしくない――その言葉以上の意味があってほしい。いや、あってほしくない。どちらも私の本心だ。