追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
 私、全然駄目かもしれない。
 私の仕事ってなんだ。私って、鵜ノ崎さんの、なんなんだ。
 揺らいではいけないものが揺らいでしまっている、そんな気しかしない。

「一旦……戻ります。なにかありましたらまたお声がけください」

 露骨に手を引っ込めながら、固まっていた口を無理やり動かす。
 早口なのにたどたどしい喋り方になった。その違和感は鵜ノ崎さんにも伝わったらしく、彼の眉尻は少し下がったように見えた。

 私がこれ以上の接触を拒んだからだとは思いたくない。
 そんなふうに思ったら駄目な気がする。

 困る。だって、私は仕事だけでいい。
 それ以外はなにも要らないし、恋なんてもってのほかだ。特に、追いかける恋はもう絶対にできない。したくもない。

 ――でも、追いかけられる恋だったら?

 考えたこともなかった。私には縁がなさすぎて、考える必要がなかったから。
 これからも考えなくて良かったはずなのに、私の心は今、どうしようもないほど乱れてしまっている。
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