追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
「酒巻先輩、鵜ノ崎グループの社員なんだ~。今日は私も連れてきてもらっちゃったの!」
「……そうなんですか」
訊いてもいないことを喋る姫田さんへ、機嫌を損ねさせないよう相槌を打ちながら、このふたり、よく私に気づいたな、と思う。
だいたい、なにが『柊木って呼んだほうがいいよな』だ。
こういう場でなかったとしても、この男に下の名前で呼ばれる筋合いはない。ぞわりと鳥肌が立った腕を、私は咄嗟にもう片方の腕で押さえた。
「あいにく、人を待っておりまして。失礼しますね」
「あ、いや、ちょっと待ってほしい。話があって声かけたんだよ」
ドアの近くへ移動しようとした私に、しぶとく言い縋ってくる酒巻さんを、私は眉を寄せたきりで視界に入れ直す。
まさか酒巻さんがまだ姫田さんと関係を持っていたとは思わなかった。こうした場で隣同士に並んでいる以上、男女の関係ではなくビジネスパートナーとして現れたのかもしれないけれど、どう見ても装いがペアという印象だ。
姫田さんの立ち位置がよく分からない。
中途で採用されたはずの私の前の職場を、すでに退職した後なのだろうか。もしそうだとしたら、ごく一部とはいえ社内の人間関係を好き勝手に乱しておいてどういう心づもりなのか、想像がつかない。
「……そうなんですか」
訊いてもいないことを喋る姫田さんへ、機嫌を損ねさせないよう相槌を打ちながら、このふたり、よく私に気づいたな、と思う。
だいたい、なにが『柊木って呼んだほうがいいよな』だ。
こういう場でなかったとしても、この男に下の名前で呼ばれる筋合いはない。ぞわりと鳥肌が立った腕を、私は咄嗟にもう片方の腕で押さえた。
「あいにく、人を待っておりまして。失礼しますね」
「あ、いや、ちょっと待ってほしい。話があって声かけたんだよ」
ドアの近くへ移動しようとした私に、しぶとく言い縋ってくる酒巻さんを、私は眉を寄せたきりで視界に入れ直す。
まさか酒巻さんがまだ姫田さんと関係を持っていたとは思わなかった。こうした場で隣同士に並んでいる以上、男女の関係ではなくビジネスパートナーとして現れたのかもしれないけれど、どう見ても装いがペアという印象だ。
姫田さんの立ち位置がよく分からない。
中途で採用されたはずの私の前の職場を、すでに退職した後なのだろうか。もしそうだとしたら、ごく一部とはいえ社内の人間関係を好き勝手に乱しておいてどういう心づもりなのか、想像がつかない。