追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
「おはよう」
「おはようございます」

 午前十時三十分。
 私よりも二時間以上遅れてフロアに現れた鵜ノ崎さんへ、立ち上がって挨拶をする。

 この後のスケジュールを確認しつつ、鵜ノ崎さんに続いて社長室へ向かう。

「客先訪問お疲れ様でした。午後からの予定ですが、なにかお変わりは?」
「いや、今のところ変更はないかな。明日からの出張の手筈は?」
「はい、滞りなく。それと、お電話の伝言を三件承っています」

 デスクまで移動した彼の隣で、ひと通りの情報共有を済ませる。
 確認を終え、「それでは」と退室しようとしたところで、彼が「ああ、待って」と声をあげた。動きを止めて振り返ると、鵜ノ崎さんは、鞄と一緒に手にしていた紙袋を差し出してくる。

「はい、これ。柊木に」
「こちらは?」
「こないだのドイツ出張の土産」

 は、と目を見開きながら紙袋の中をちらりと見ると、手のひらサイズの正方形の小包が入っていた。
 先週の海外出張には同行していない。手触りの良い包装紙に綺麗に包まれ、さらにはリボンまでついていて、お土産というよりはプレゼントという印象を受ける。
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