追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
「あた、あたし、そんなんじゃ……ッ」
「あんた、歩加にも随分ひどい嫌がらせをして退職に追い込んだそうだな。ちょうど良かったよ、いずれ詳しく話を聞きたいと思ってた」

 ガタガタと声を震わせる姫田さんから、鵜ノ崎さんはなおも目を逸らさない。
 声が低い。慇懃な口調も崩れている。周囲の視線が、少しずつ私たち四人に集中し始め、酒巻さんがきょろきょろと落ち着きなく目を泳がせている。

 こんな公衆の面前で――これではまるで公開処刑だ。

 公開処刑。
 浮かんだそのフレーズが、頭の芯に深く刻み込まれる。
 同時に、クルーズ船の甲板で聞いた鵜ノ崎さんの言葉が蘇ってきた。

『原因の女、柊木はどうしてほしい?』
『柊木はただ、勝手に柊木に尽くしたがる俺のこと、隣で眺めてればいいだけだよ』

 あ、と唐突に腑に落ちた。
 もしかしたらこの一部始終は、私のためにわざわざ十年前の公開処刑をなぞってくれているのかもしれない、と。

「~~~っ、失礼しますッ!!」

 顔を青くしていた姫田さんは、しまいには土のような荒んだ顔色で悲鳴じみた声をあげ、ホールの外へ走り去っていく。
 その背には一切関心がないとばかり、鵜ノ崎さんは酒巻さんへ向き直った。
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