追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
 ともすれば、このまま背中のリボンをほどいて押し倒したくなる。
 そういう衝動に必死に抗っていると、そろそろと遠慮がちに背になにかが触れた。柊木の腕だと気づき、鼓動が跳ねる。初めて抱き締め返され、期待してしまいそうになる。

「そんなことは……す、すっきりしましたよ、すごく」
「無理やり言わせてる感がすごい」
「本当ですって」

 食い下がる柊木の声はどこまでも真面目だ。
 これも仕事という認識だからこそのリップサービスなのかも、と弱気な自嘲がよぎる。

 今、俺の背中に腕を回しているのも、柊木にとっては仕事の一環でしかないのかもしれない。
 そんなことばかり考えている時点で大概だ。

「あの。姫田さんの話って、訊いてもいいですか」

 おずおずと訊かれ、小さく息をつく。
 訊かれないわけはないと分かっていた。それこそが、今日、柊木がこの部屋に俺を呼んだ理由なのだとも思う。

「社会的に始末するくらいならできる、って前に話しただろ」
「聞きました、けど」
「役職者を含めた五人を相手に……まぁ平たく言えば身体を使って〝お願い〟してたらしいよ。自分の思い通りに、嫌いな奴を辞めさせたりとか、左遷させたりとか」
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