追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
 相変わらず気遣い上手だ。それに、誰のことも贔屓しない。
 鵜ノ崎さんのそういうところを、私は純粋に好ましく思っている。もちろんビジネスパートナーとして。

 ――前職を辞めて今の仕事に辿り着き、間もなく二年半になる。

 短期間で辞める人が多く、なかなか長続きしてくれないといういわくつきの当社の社長秘書は、実際にかなりハードで心身の負担も大きい。
 ただ、私みたいな仕事中毒人間には思いきり向いている。

 前職を辞めようと考え始めた頃、たまたま大学の恩師と鉢合わせ、その際に紹介されたのが鵜ノ崎さんだった。数年前に起業した教え子が秘書を探している、君の経歴なら欲しがりそうだ、と。
 先生の仲介なら、と最初から面接の席を設けてくれた鵜ノ崎さんは、少しも私を覚えていなかった。大学や先生のことは話題に上ったけれど、本当にそれだけだ。

 鵜ノ崎さんが、食堂での例の公開処刑を覚えていて、その話を茶化すように出してきていたら、せっかくの転職先とはいえ私から断っていた。
 でも、茶化されるどころか話題にすらならなかった。私のことなんか一ミリも覚えていなそうな彼の様子を見て、私は心底ほっとした。

 あれから二年半。
 秘書業務をはじめ、さまざまな場面で柔軟性が求められるこの職場で、私は日々自信を持って働けている。
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