追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
「あ……ぅ」
「どんなに匂わせても駄目だから、もう追うことに決めた。柊木が初めてなんだ、誰かに尽くすのも尽くしたいと思うのも」

 互いの吐息が肌を掠める。
 そんな距離から見つめる柊木の顔は、過去にないほど真っ赤だった。

「今からキスする。嫌なら拒んで」

 潤んだ瞳をまっすぐ見つめて囁くと、途端に小さな両手が口を押さえてくる。
 その手を、指を絡めながら外していく。できるだけ丁寧にしたつもりだが、責めるような意図も交ざってしまったかもしれない。

 それでも、柊木はそれ以上抵抗しなかった。

「その程度じゃ〝拒む〟には入らないな」
「ま、待ってくだ、私、あの、」

 言い訳になっていない言い訳を聞きながら、ふふ、と笑いが零れた。
 意地悪をしたくなるのも初めてだ。柊木のためならなんでもしたくなる。なんでもしてみせる。

「ん……っ」

 絡めた指ごと手を壁に繋ぎ留め、唇に唇を重ねる。
 初めて触れた柊木の唇は、想像していたよりもずっとやわらかかった。深くまで絡めたくなる衝動をなんとか堪え、ゆっくりと唇を離す。
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