追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
 夢中で貪っていたから、どのくらい時間が過ぎたのか分からない。分からないが、やがて柊木は腰が砕けた様子で体重を預けてきた。

 無事に骨抜き状態になった柊木を抱きかかえる。
 くた、と身を預けてくる彼女の肌は、顔も首も耳も、指先の果てまで真っ赤に火照っていた。

 誇張なしに、頭がおかしくなりそうだ。

「お茶」
「は、……ぇ?」
「ご馳走してくれ。タクシーから降りるとき、約束しただろ」

 力の抜けた身体を抱き留めながら囁く。「泊めてくれなくていいから」と続けると、見るからに蕩けきっているくせに、柊木は苦々しく表情を歪めてみせた。

 苦い顔まで可愛い。
 骨抜きなのは、完全に俺のほうだ。

「お願いだ。なにもしないから、キス以外は」
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