追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
 恋の自覚と、告白できないジレンマ。今の私はその両方を同時に抱えている。
 そして母は、私よりも家や父の面子を気に懸けながら、私に縁談を提案してくる。

 やんわりと断ったりはぐらかしたりできる余裕なんて、私には少しも残っていない。

「ごめんお母さん。私、そういう話、今……ううん、もう聞きたくない」
『えっ』

 電話越しに低く断ると、母は驚いた声をあげたきり喋らなくなった。

 地元に戻ることにも、結婚を考えることにも、私はずっと消極的だった。
 それが母にまったく伝わっていないとは思わない。ただ、ここまではっきり提案を断るのは、今日が初めてだった。

『でもあんた……待ってよ』

 言い淀むような母の声が、困惑も顕わに続く。

『ちょっとくらい考えてくれても……お父さんにだって、お付き合いが』
「ううん、嫌だよ。お父さんの付き合いのために私を使うのって変だし、お米を送ってやるんだからその代わりにお見合いしろって話ならお米も要らない」

 言いすぎている気はしたけれど、どうしても止まらなかった。
 何年もの間、やんわりと断り続ける中でちりちりと蓄積してきた苛立ちの、その全部を突きつけてしまった。ひりつくような沈黙が耳に痛い。
< 150 / 254 >

この作品をシェア

pagetop