追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
 はぁ、と溜息をつきながら、私は着信に応じる。

「もしもし?」
『歩加~? どうもどうも、お姉ちゃんです』

 呑気そうな声が聞こえてきて、それまでの気分も忘れて噴き出しそうになる。
 誰かに似ている。直近でこの喋り方によく似た人の声を聞いた気がしてならない。誰だっけ、と一瞬考え、すぐに思い至った。

 鵜ノ崎さんのお父様だ。
 そうだった。姉もこういうタイプだった。

『えっと~、歩加ちゃん今お時間って大丈夫です?』
「そんな仕事中の連絡みたいに……お母さんから愚痴られたとかでしょ、さっきお見合い断ったんだよね」
『あっは当たり~。大丈夫大丈夫、お母さん今もうだいぶ落ち着いてるよ~ん』

 間延びした喋り方は変わらない。
 普段からおっとりした人だけれど、姉はおそらく今、私に気を遣わせないためにわざと普段以上に締まりのない喋り方をしている。

「ごめん。巻き込んじゃった」
『いいんだよ~。まぁお母さんも単純に歩加が心配なだけだからさぁ、落ち着いたらメッセージでも送ったげてよ』
「……うん。ありがと」

 ふ、と口が緩んで苦笑が零れる。
 姉は、昔から潤滑油めいた役割が上手だ。
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