追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
 姉は私より八つ年上だ。
 齢が離れているせいで、小さい頃はあまり話す機会もなかったけれど、大人になってから、特に姉が結婚して家庭を持ってからよく話すようになった。

 それこそ、仕事の話からプライベートの話まで、いろいろ。

「お姉ちゃん。あの、私」
『ん~?』
「好きな人、できた、かも」

 しん、と電話越しに沈黙が降りる。
 私が仕事に打ち込む理由を――結婚も恋も避け続けている理由を、姉は知っている。

『〝かも〟なんだ?』
「うん。認めたら駄目になりそうで、怖い」

 電話だから、なにより相手が姉だから、唇からするすると弱音が零れ落ちる。

『どんな人?』
「ええと、職場の人」
『何歳?』
「えっ、私の三つ上だから……三十一かな」
『同僚?』
「いや、社長」
『社長!?』

 それまでの呑気な調子から一転、最後に声を張り上げた姉へ、「はは」と笑い返す。

『そういえば歩加んとこの社長さん、めちゃめちゃ若いんだったね。おっきいグループ会社の御曹司じゃなかったっけ?』
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