追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
「うん。まぁ弊社はグループの会社ではないんだけども」
『あ~そっか、じゃあ正真正銘の独立って感じかぁ社長さん。すごいわ~、でもまぁ』

 感心した様子で話していた姉の声が、不意にワントーン低くなる。

『あんたがその人を好きって聞いてお姉ちゃんが気にするのは、その人があんたを大事にしてくれるかどうかだけ、なんだけど』

 ひゅ、と言葉に詰まった。

 直接会わせたことはないけれど、姉は、酒巻さんを含めた私の元彼たち三人の詳細をおおよそ知っている。
 特に酒巻さんには辛辣だ。十年前の公開処刑事件の後、姉は、当時住んでいたアパートをわざわざ新幹線に乗って訪れてまで私を心配してくれた。

 恋をした相手を追いかけては玉砕する。
 それを繰り返す私がそのたびに負う傷を、姉はいつも気に懸けてくれている。

『で、社長さんはどう思ってるの、あんたのこと?』
「どうっていうか、追われてる」
『追われてる!? あんたが追ってるんじゃなくて!?』
「うん。いやなんでこんなことになってるんだろ、私もよく分かんない」
『そっかぁ~、ていうか社長に追わせてんのウケるな。歩加はまだ追えてないんだ?』

 う、と口ごもってしまう。
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