追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
『追っちゃうの怖いって言ってたもんね、さっき』
「……うん。そう」
『そっかあ。じゃあしばらくは勝手に追わせとけば良くない?』
「は?」

 想像の斜め上を行く提案をされ、思わず目が点になる。

「いや、それはちょっと」
『いいじゃん。向こうが追いたくて追ってくるんでしょ?』
「っ、でも本当なら私なんかが振り回しちゃいけないような人なんだよ、ご実家だって大きいグループ会社の……」
『関係ないよ、そんなの』

 直前までケラケラと笑っていた姉の声が一段と低くなり、喉が鳴った。

『好きっていう感情のことを考えてるときに別の要素を混ぜ込むの、お姉ちゃんはおすすめしない』
「あ……」
『あと、自分を〝私なんか〟って言うの、やめな』

 別の要素。その言葉が深く心に突き刺さる。
 恋という感情の中心を見つめたいとき、仕事がどうとか、実家がどうとか、外見がどうとか、そういう話を持ち出すのはナンセンスだと姉は言っている。

「そうかも。ごめん」
『いいよいいよ~。けどさぁ、歩加が怖いって思ってるのは知ってるの、彼?』
「うん。伝えた」
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