追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
――というか、これはもう私、完全に追っていないか?
いや、追ってはいない。そんなはずはない。
なぜなら私はまだ鵜ノ崎さんに好きだと伝えていないから。
必死にそう言い聞かせる。〝言葉にして伝えていないうちはセーフ〟だなんて、それ自体、私が勝手に私のためだけに制定した独自ルールでしかない。そうと分かっていても、私はその一線に縋るしかない。
「あとちょっとでできますので。あの、狭い部屋で恐縮です」
「いや、そんなことないよ。ありがとう」
コート用にハンガーを渡し、かけてもらってから部屋へ案内する。それから、対面のキッチンにそそくさと戻った。
例の電話の後に母から送られてきた新米も炊いている。炊飯ジャーからはいい匂いが漂ってきている。間もなく炊き上がりだ。
「なんか久しぶりですね、顔合わせるの」
「そうだな。あれからずっとオンラインばっかりだったもんな」
あれから。
その言葉を出されたせいで、頑張って向けようとしていた視線を露骨に外してしまった。
まっすぐ顔を見たら、間違いなく私はあの夜のキスの嵐を思い出す。
あんな破廉恥なことをしでかしたというそれ自体も羞恥を煽ってくるものの、そもそも夜分に男性を部屋に誘うなんて、私は私で完全にどうかしていた。もっともその理論だと、今夜も私は完全にどうかしていることになるのだけれど。
いや、追ってはいない。そんなはずはない。
なぜなら私はまだ鵜ノ崎さんに好きだと伝えていないから。
必死にそう言い聞かせる。〝言葉にして伝えていないうちはセーフ〟だなんて、それ自体、私が勝手に私のためだけに制定した独自ルールでしかない。そうと分かっていても、私はその一線に縋るしかない。
「あとちょっとでできますので。あの、狭い部屋で恐縮です」
「いや、そんなことないよ。ありがとう」
コート用にハンガーを渡し、かけてもらってから部屋へ案内する。それから、対面のキッチンにそそくさと戻った。
例の電話の後に母から送られてきた新米も炊いている。炊飯ジャーからはいい匂いが漂ってきている。間もなく炊き上がりだ。
「なんか久しぶりですね、顔合わせるの」
「そうだな。あれからずっとオンラインばっかりだったもんな」
あれから。
その言葉を出されたせいで、頑張って向けようとしていた視線を露骨に外してしまった。
まっすぐ顔を見たら、間違いなく私はあの夜のキスの嵐を思い出す。
あんな破廉恥なことをしでかしたというそれ自体も羞恥を煽ってくるものの、そもそも夜分に男性を部屋に誘うなんて、私は私で完全にどうかしていた。もっともその理論だと、今夜も私は完全にどうかしていることになるのだけれど。