追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
「柊木を紹介してもらったときに『とにかく運の悪い子』って話してたの、めちゃくちゃ印象に残ってるよ」
「ああ……退職の理由、関屋先生には正直に話したからかもしれないですね」
「あれから二年半か。早いな」

 ふ、と口を緩めて微笑む鵜ノ崎さんの、その口元から目が離せなくなる。
 何度も見ているけれど、食事に同席するたび、食べ方が本当に綺麗だなと見惚れてしまう。育ちのいい人はおでんまで上品に食べるんだな、という感動がある。

 そう、彼は御曹司だ。
 私なんかとは比較にならない場所で生きている人。でも。

『自分を〝私なんか〟って言うの、やめな』

 姉の声が圧しかかる。
 過ぎた卑屈は私自身を貶め、苦しめる。姉はきっと、そういう意味であの言葉を口にした。

 きゅ、と唇を引き締めたそのとき、鵜ノ崎さんが笑い交じりに口を開いた。

「まぁ関屋先生、本当に救世主だしキューピッドだよな、俺らにとって」
「キューピッド……」

 話が思わぬ方向に進み、きょとんとしてしまう。
 眉が寄る。ビジネスパートナーとしての意味なのか、それともプライベートな意味で言っているのか測りかねた。
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