追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
「ん……」

 唇と唇が触れた瞬間、自分のものとは思えないほど蕩けた声が漏れた。
 今日のキスは、触れるだけのキスとは違った。あの夜、鵜ノ崎さんは絶え間なく唇を寄せては私の唇を啄んでいたけれど、深くまではしなかった。撫でるような、ただ甘いだけのキスだった。

 それなのに、今夜は。

「は、ぁ……っ」

 壁際に私を追い詰めた鵜ノ崎さんは、いつの間にか私の手首を掴んでいた。
 呼吸すらままならないほど深く絡められた熱が、私をおかしくする。

 うまく熱を逃がせない。
 こういうキスは知らない。こんな、触れた場所が全部溶けてしまいそうになる情熱的なキスなんて。

 初めて知る熱に蕩かされ、くらくらと眩暈が止まらなくなる。
 勝手に震える腰を抱く鵜ノ崎さんの腕に、一層力がこもる。気を抜いたら簡単に膝が崩れそうで、それでもキスは終わらない。唇を塞がれているから、制止の声もあげられない。

「歩加」
「あ……ぅ、」

 唇が微かに離れた、その隙間から名を呼ばれ、今度こそ腰が砕けた。
 ぐずぐずに力の抜けた身体が、床に崩れ落ちそうになった途端、鵜ノ崎さんの腕が力強く私を抱き上げる。

 けれどその直後、彼はあからさまなほど分かりやすく固まった。
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