追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
「あの顔、ってどの顔ですか」
「柊木がうちの会社にきて半年くらいの頃、飯に誘っていろいろ訊いただろ。結婚の予定とか」
「あ……りましたね、確かに」
「『今の仕事と結婚したい』って言ったの、覚えてるか」

 視線が派手に泳いでいる。
 あのとき、柊木はだいぶ酔っていた。その言葉を口にしたこと自体、記憶に残っていないのかもしれない。

「自分が振ってる仕事に嫉妬した。あのときから、俺はずっと柊木だけ追いかけてる」

 顔を覗き込むと、柊木は頬を真っ赤に染めていた。
 そんなに前から、と言いたそうな顔に見える。困る。絶句している顔まで可愛い。

「し、嫉妬、って……じゃああの頃の恋愛相談ってなんだったんですか」
「柊木の話だった」
「は……いや、私の話を私に振ってた? ってことですか?」
「うん」
「なんで?」

 心底意味が分からないとばかり、柊木の言葉遣いがとうとう崩れた。
 視線を泳がせていたことさえすっかり忘れている様子だ。

「気を惹きたくて。効果ゼロだったけど」
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