追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
「言わなくていい。柊木が自分から言いたくなるまで全然待てるし、俺」

 カスの元彼どもとは違ってな、と喉まで出かかっていた言葉は無理やり呑み込んだ。

「こっち向いて」
「あ、ぅ……」

 囁くと、ゆっくり向き直ってくれる。
 素直にそうしてくれたわりに目が合わない。忙しなく泳いでいる。

 本当に可愛い。
 飽きるわけがない。二年あまり、俺はもうずっと柊木のすべてが〝可愛い〟に繋がってしまう状態で生きているのに。

 泊まりの用意はしてこなかったから、今夜は帰らなければならない。
 名残惜しくて頭がおかしくなりそうだ。せめてあと少しだけでも傍にいたい。離れたくない。

「キスしよう。もう一回」

 返事は待たなかった。
 吸いすぎてやや腫れぼったくなった彼女の唇に、何度目になるか分からない口づけを落とした。
< 184 / 254 >

この作品をシェア

pagetop