追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
 いい雰囲気を邪魔されたからという理由もあるにはあったが、それだけではなかった。
 着信と思しき通知のバイブ音はなかなか鳴りやまず、嫌な予感が増していく。そして、そういう予感ほど的中するものだ。

 切ってもいいが、不在という体を保ったほうが後々の対応を取りやすくなるから、できれば放置したかった。
 だが、柊木が気にしている。

 画面を見て相手を確認した後、やっぱりな、と苦々しく唇が歪む。
 応じることなく、すぐさまポケットにスマホをしまい直した。

「出なくて、いいんですか」
「いい。後で折り返す」

 柊木の表情は完全に曇っていた。〝私、邪魔かな〟と思っている。絶対に。
 たったひと月弱で、本当にいろいろな感情を顔に出してくれるようになった。それ自体は嬉しいが、そんな顔をさせたいわけでは断じてない。このタイミングで電話をかけてきた相手に対し、強烈な苛立ちを覚えてしまう。

 それをどうにもできずじまいで、柊木の手を強引に引き、唇を奪った。

「ん……っ」

 柊木の唇は冷たい。
 もしかしたら、苛立ちに灼けた俺の唇が熱くなっているだけなのかもしれない。
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