追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
「だ、駄目です。私は、仕事、ですから」

 動揺が過ぎて、言葉の最後は不自然な片言になる。
 途端に、髪に触れていた唇がいたずらっぽく弧を描いた。

「可愛い。半分冗談だったけど冗談じゃなくなりそう」
「なに言ってるんですか本当……そもそも半分しか冗談じゃないのも駄目だと思います」

 息をするように『可愛い』なんて言わないでほしい。心臓がもたない。
 落ち着かない気分で浅く呼吸を繰り返していると、髪から離れた唇が、見る間に私の唇に重なった。

「柊木を好きになってから、俺、もうずっと格好悪いな。不安なのかも」
「……あ」

 苦笑い気味に零した後、鵜ノ崎さんはくしゃりと表情を崩した。
 きっとそれは、他の誰にも見せない種類の表情で、私だけが独占している浮かれた気分に陥りそうになって――優越感を覚えたのは一瞬で、それはすぐに掻き消えた。

 私がきちんと気持ちを言葉にして伝えられていないから、こんなふうに不安にさせているのかもしれない。でも。
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