追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
 揺らぐ気持ちがおそらく顔に出た。
 そのせいか、鵜ノ崎さんは弱った表情をあっさりと引っ込め、話の矛先まで変えてしまった。

「だから、今夜はいっぱい抱かせてほしい」

 きゅ、と唇を噛み締める。露骨な言葉を選んだのも、多分、彼なりの気遣いだ。
 それにしても『いっぱい抱かせてほしい』……ますます顔が熱くなる。さっきまでベッドを軋ませていた行為の詳細が、駄目だと思っていても鮮明に蘇ってくる。

 過去に交際していた三人の男性の中で、身体の関係に至ったのは酒巻さんだけ。それもたった一度きりだ。
 積極的に求めてきていたわりに、初めて許して以降は求められなくなった。私が不慣れで下手だったから、がっかりされたのだと思う。

 そんな経緯があるから、鵜ノ崎さんと肌を重ねたときも、内心は不安でいっぱいだった。それなのに。

 いまだに慣れない。
 身も心も焦がされるような愛され方を、私は、鵜ノ崎さんに触れられるまで知らなかった。

 自分から腕を伸ばす。抱きついて、唇に唇を寄せる。
 重なり合う直前、鵜ノ崎さんが少し驚いた様子で目を見開いた。
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