追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
 仮に暗い感情を隠しているにしても、違和感が拭えない。
 もし彼女が鵜ノ崎さんと噂になりたがっているなら、私と鵜ノ崎さんの関係を知ってなお、私と親しくしたいと考える理由がないからだ。

 そもそも、彼女は鵜ノ崎さんの知っている人なのか。
 それに、あのひと言も引っかかる。

『だいぶ近い』

 あれはどういう意味なのか。
 あの瞬間、かなり嬉しそうに見えた。なにがなににどういうふうに近かったのか、さっぱり分からない。

 鵜ノ崎さんに相談したほうがいいか迷ったけれど、今から仕事ばりに神経を使う状況が続くだろう彼に余計な負担をかけたくはない。
 あの美女の思惑が判明するまでは伏せておいたほうが、きっと良い。

 でも、あの動画を公表されてしまったら手遅れなのでは?

 こくりと喉が鳴る。キーボードの上を走らせていた指を止め、私はスマホの画面を凝視した。指紋認証でロックを解除し、メッセージアプリのアイコンをタップする。

 アプリに登録されている彼女の名は、ひらがなで〝れみ〟。
 ホーム画面の画像は本人のアップの顔写真だ。直近では、ブランド化粧品のCMで頻繁に見かける顔だった。

 間違いない。
 ブレイク中の人気モデル、〝レミ〟だ。
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